
Sunoなどの生成AIを使えば、音楽制作の経験がなくても、短時間で曲を作れるようになりました。
気に入った曲ができたら、
SpotifyやApple Musicでも配信してみたい
と考える人もいるでしょう。
ところが最近は、
- AIで作った曲が審査に通らない
- AI生成コンテンツという理由で配信できない
- 一部の配信先を選べない
といったケースがあります。
AI楽曲が急速に増えたことで、配信代行サービスや音楽配信サービス側も、それぞれルールを整え始めています。
大切なのは、「AIで曲を作るのはダメ」と考えるのではなく、AIとの付き合い方が次の段階に入ってきたと考えること。
この記事では、AI音楽を取り巻く現在の状況と、AIで作った曲を「自分の作品」へ育てていく考え方を、初心者にも分かりやすく紹介します。
【この記事は、AIで作った曲を編集して仕上げていく全7回シリーズの一部です】
「何から始めればいい?」という方は、まず全体の流れから確認してみてください。

このシリーズの流れ
STEP 1 AI音楽の配信ルールを知る ← 今この記事
STEP 2 AI曲をステムに分ける
STEP 3 DAWを用意する
STEP 4 MIDIの基本を知る
STEP 5 AI曲のステムをMIDIに変換する
STEP 6 MIDIを好きな音源で鳴らす
STEP 7 ミックスして1曲として書き出す
AIで作った曲が配信できないケースが増えている

少し前までは、AIで作った曲をそのまま配信するケースも珍しくありませんでした。
たとえば、
- AI生成楽曲を受け付けない
- AIの使い方によって審査する
- 一部の配信先には送れない
- AIを使ったことの開示を求める
など、対応はさまざまです。
利用する配信代行サービスや配信先によって、ルールが違うからです。
では、なぜAI音楽への対応が変わってきたのでしょうか。
背景には、生成AIによって誰でも簡単に、そして大量に音楽を作れるようになったことがあります。
AI音楽への対応が少しずつ進んでいる

生成AIが登場したことで、音楽を作るハードルは一気に下がりました。
一方で、短時間に大量の曲を作れるようになったため、配信サービス側も対応が必要になっています。
月平均でも、1日あたり約9万曲にのぼります。
Spotifyも、AIによる大量投稿や重複コンテンツなどへの対策を強化しています。
こうした動きを見ると、
AI音楽が禁止され始めた
というより、
急速に広がったAI音楽に、サービス側の対応が追いついてきた
と考えた方が分かりやすいでしょう。
新しい技術が広がれば、それに合わせてルールも必要になります。
AI音楽も今、自由に作って投稿するだけの段階から、どう使い、どう配信するのかを考える段階へ移りつつあります。
もちろん、これはAIで音楽を作ること自体を否定する話ではありません。
むしろ、AIと音楽がこれから共存していくために、ルールが整い始めていると考えられます。
AIで作った曲はどこでも配信できない?サービスによってルールは違う

結局、AIで作った曲は配信できるの?
ここが一番気になるところだと思います。
AI生成楽曲を受け付けないところもあれば、条件付きで認めているところもあります。
2026年8月時点の主なサービスの対応をまとめると、次のとおりです。
| サービス | AI音楽への主な対応 |
|---|---|
| Beatport | AI生成音楽を受け付けない方針 |
| CD Baby | AI生成コンテンツは配信不可。一部にAI生成音源を含む場合も不可 |
| TuneCore | 使用した生成AIの学習データが適切にライセンスされている場合に配信可能 |
| LANDR | AI音声生成だけに全面的に依存した音楽は配信対象外 |
| RouteNote | 一部のAI生成・AI補助楽曲を受付。ただし配信できないストアなどがある |
| Spotify | AIの使用自体を一律禁止していない。なりすましや大量投稿、スパムなどへの対策を強化 |
| Deezer | AI生成曲を検出・タグ付け。おすすめや編集プレイリストから除外するなど独自に対応 |
| YouTube | AI生成音楽を一律禁止していない。AI利用について開示・ラベル表示の仕組みを導入 |
※各社の公式情報をもとに2026年8月時点で整理しています。ルールは変更される可能性があるため、実際に配信するときは最新の規約も確認してください。
ここで少し分かりにくいのが、「配信代行サービス」と「音楽配信サービス」は別物という点です。
たとえば、CD Baby、TuneCore、LANDR、RouteNoteなどは、あなたの曲をSpotifyやApple Musicなどへ届ける配信代行サービスです。
一方、SpotifyやDeezer、YouTubeなどは、リスナーが実際に音楽を聴く側のサービスになります。
そのため、
というわけではありません。
入口となる配信代行サービスで、AI楽曲を受け付けていない場合があるからです。
AI生成楽曲を受け付けていないサービスもある
特に分かりやすいのが、BeatportとCD Babyです。
CD BabyもAI生成コンテンツを受け付けていません。
さらにCD Babyの場合、
- 商用利用できるAIで作った曲でも不可
- 曲の一部分だけがAI生成の場合も不可
- 自分で音を追加していても、AI生成部分が残っていれば不可
という方針を示しています。
つまり、「AIで作った曲を少し編集すれば、どこでも配信できる」わけではありません。
ここは、このシリーズでも注意しておきたいポイントです。
AIを使っていても配信できるサービスはある
一方で、AIを使った音楽をすべて拒否しているサービスばかりではありません。
ただし、使用した生成AIについて、学習に使われたデータが適切にライセンスされていることを条件としています。
RouteNoteも一部のAI生成・AI補助楽曲を受け付けていますが、
- Amazon
- 韓国の一部音楽サービス
- Content Recognition関連の配信先
などには配信できません。
AIを使った作品は追加審査の対象になる場合もあります。
このように、「AIを使ったかどうか」だけで決まる時代ではなくなりつつあります。
どのAIを使ったのか、どのように制作したのか、どこへ配信するのか。
サービスごとに確認する必要があります。
AI音楽を見分ける「透かし」の導入も始まっている
AI音楽への対応は、配信ルールだけではありません。
たとえばGoogleの音楽生成AIでは、人間の耳には聞こえない「電子透かし」を生成した音楽に入れています。
Sunoも2026年8月、生成した楽曲をほかのサービスでも識別できるよう、電子透かしやフィンガープリント技術を導入すると発表しました。
さらに、Sunoで生成した曲には、AI生成などの来歴を確認できる「Content Credentials」という情報も付けています。
つまり今後は、AIで作った曲を自己申告するだけでなく、システム側でも確認できる方向へ進んでいくと考えられます。
SpotifyはAI音楽そのものを禁止していない
Spotifyも、AIを使って作ったという理由だけで音楽を一律禁止しているわけではありません。
現在、特に対策を強化しているのは、
- AIを使った無許可の声のなりすまし
- 楽曲の大量投稿
- 重複したコンテンツ
- 検索を狙ったスパム
- 不正なストリーミング
といった行為です。
つまり、AIそのものよりも「AIをどう使うのか」が問われ始めています。
AIを禁止するのではなく「分ける」動きもある
DeezerやYouTubeの対応を見ると、また少し違った方向も見えてきます。
YouTubeでも、AI生成音楽は開示対象です。
さらに音楽パートナー向けには、
- すべて生成AI
- 一部に生成AIを使用
- 生成AIを使用していない
といった情報を付けて配信できる仕組みがあります。
つまり、AI音楽をすべて消してしまうのではなく、「AIを使った作品だと分かるようにして扱いを分ける」という動きも始まっています。
AI音楽に対するルールは、まだサービスごとにバラバラです。
だからこそ、
AI音楽は禁止された
と考えるより、
AI音楽をどう扱うのか、サービス側のルールが整い始めた
と考える方が、今の状況には近いでしょう。
なぜAI音楽にルールが必要になってきたの?

生成AIなら、短時間で何曲も作れます。
もちろん、それ自体はAIの大きなメリットです。
ただ、
を大量に繰り返すことも簡単になりました。
月平均でも、1日あたり約9万曲です。
ここまでAI楽曲が増えてくると、配信サービス側も何もしないわけにはいきません。
- 大量投稿やスパムをどう防ぐのか
- AIによるなりすましをどう扱うのか
- リスナーにAI生成だと伝えるのか
- 人が作った曲とAI生成曲をどう扱い分けるのか
こうした問題について、ルールを決める必要が出てきます。
これは、AI音楽をなくすための動きとは限りません。
AI音楽が一気に広がったからこそ、音楽配信の仕組みもそれに合わせて変わり始めた。
今は、そんな時期なのだと思います。
AIで曲を作ること自体をやめる必要はありません。
では、これからAIを音楽制作にどう使っていけばいいのでしょうか。
じゃあ、AIで音楽を作るのはやめた方がいい?

ここまで読むと、
だったら、AIで音楽を作るのはやめた方がいいの?
と思うかもしれません。
そんなことはありません。
たとえば、
- 曲のアイデアを出してもらう
- いつもと違う展開を試してみる
- アレンジのヒントをもらう
- 自分では思いつかなかった音の使い方を見つける
- 作った曲を別の雰囲気にしてみる
こうした使い方もできます。
特に、これまで音楽を作ったことがない人にとって、AIは大きなきっかけになります。
だから、AIに曲を作ってもらうことをゴールにする必要はありません。
AIが作ってくれた曲を、音楽制作のスタート地点にする。
気に入ったメロディや雰囲気を残しながら、自分で少しずつ手を加えていく。
そんな使い方も、AI音楽の楽しみ方のひとつです。
AIで作った曲を、そのまま完成品にしなくてもいい

Sunoなどで気に入った曲ができると、その音源が「完成品」のように感じるかもしれません。
でも、そこで完成にしなくても大丈夫です。
たとえば、
- ピアノを違う音に変える
- ベースをもっと目立たせる
- ドラムだけ別の音にする
- 気になる部分を作り直す
- 全体の音量バランスを整える
といったこともできます。
そんなこと、音楽制作をやったことがないのにできるの?
と思いますよね。
最初から難しいことをする必要はありません。
そこから気になる音を少しずつ変えていけばOKです。
AIが作ったものをそのまま使うのではなく、
これは残したい
この音は変えたい
と、自分で決める部分を増やしていく。
それだけでも、AIで作った曲との向き合い方は大きく変わります。
少しずつ「自分で決める部分」を増やしていこう

AIで作った曲を自分らしい作品にしていくといっても、最初から曲を全部作り直す必要はありません。
このシリーズでは、次の順番で少しずつ曲に手を加えていきます。
- 曲をパーツごとに分ける(ステム分離)
- 曲を編集するソフトを用意する(DAW)
- 音を編集しやすいデータにする(MIDI)
- ステムをMIDIに変換する
- ピアノやドラムなどを好きな音に差し替える
- 音量を整えて完成させる
知らない言葉が並んでいますが、今は意味が分からなくても大丈夫です。
ひとつずつ順番に紹介していきます。
このメロディは残す
ドラムはこっちの音が好き
ここはもう少し静かにしたい
そんな小さな判断でも構いません。
なお、この作業は配信サービスのAI判定や審査を回避するためのものではありません。
AI生成楽曲の扱いはサービスごとに違うため、編集したからといって必ず配信できるわけではありません。
このシリーズで目指すのは、AIをうまく制作に取り入れながら、自分で考え、自分で選んだ作品へ少しずつ育てていくことです。
AIはゴールではなく、音楽を始めるきっかけになる

AI音楽を取り巻くルールは、これからも変わっていくでしょう。
むしろ、これまで音楽制作をしたことがない人でも、
自分も曲を作ってみたい
と思えるきっかけを作ってくれました。
大切なのは、生成ボタンを押したところをゴールにしないこと。
AIが作った曲をきっかけに、
- 好きな音を選ぶ
- 気になるところを変える
- 自分なりのアレンジを加える
そんな小さなところから始めてみてください。
AIに全部任せるのではなく、AIと一緒に作っていく。
そうやって「自分で決める部分」を増やしていけば、音楽制作はもっと楽しくなります。
AIが作った曲から、あなたの作品へ。
次回は、その最初の一歩となる「ステム分離」について紹介します。







