
Main St Audio Labs「Main St 5F1」は、1956年のTweed 5F1をベースにした無料のギターアンプシミュレーターです。
12AX7プリアンプ、6V6GTパワー管、5Y3GT整流管、スピーカーなどを物理モデリング。
ピッキングの強弱に反応してクリーンからブレイクアップへ変化する、シンプルながら演奏ニュアンスを生かせるアンプです。
Main St 5F1とは

Main St 5F1は、1956年のTweed 5F1をコンポーネントレベルで再現したアンプシミュレーターです。
静的なキャプチャーでアンプ全体を再現するのではなく、Wave Digital Filters(WDF)を使って回路をサンプル単位で計算します。
主な特徴は以下のとおりです。
- 12AX7プリアンプをモデリング
- シングルエンドClass Aの6V6GTパワーステージを再現
- 5Y3GT整流管による電圧降下とサグを再現
- 出力トランスをモデリング
- Jensen P10Rスピーカーをリアクティブロードとしてモデリング
- SM57/SM94のキャビネットサウンドを収録
- 外部IRを使えるDirect出力を搭載
- 1×/2×/4×/8×オーバーサンプリング
- チューナー内蔵
各ステージがリアルタイムで相互作用するため、入力信号の強さによってアンプの反応も変化します。
ピッキングに反応する物理回路モデリング
Main St 5F1の特徴は、Tweedアンプの音色だけではなく、演奏に対する回路の反応までシミュレーションしていることです。
軽く弾けばウォームなクリーン。
強くピッキングすると12AX7や6V6GTへの入力が大きくなり、ブレイクアップやコンプレッションが加わります。
さらに5Y3GT整流管による電源サグも再現。
強くコードを弾いた瞬間にはB+電圧が低下し、その後滑らかに回復する動きまで計算されています。
そのため、歪み量を固定して使うというより、ピッキングやギター側のVolumeを含めてアンプをコントロールする使い方ができます。
VolumeひとつでクリーンからTweedクランチまで変化
アンプ部分は、1950年代のシンプルな設計を意識した構成です。
中心となるVolumeは1〜12まで設定できます。
- 1〜4:ウォームなクリーン
ボディ感を残したクリアなサウンド。 - 5〜8:Tweedクランチ
歪みが加わり、クラシックなクランチへ変化。 - 9〜12:パワー管サチュレーション
倍音を含んだサチュレーションとサグが強くなります。
大量のパラメーターを調整して音を作り込むタイプではありません。
Volumeと演奏の強弱を組み合わせながらサウンドを作っていけます。
Jack 1とJack 2で入力特性を切り替え
Main St 5F1には、特性の異なる2つの入力があります。
- Jack 1(Normal)
フル感度の入力。
1MΩの入力インピーダンスと広い帯域特性を持ちます。 - Jack 2(Low)
入力信号を−6dB減衰。
入力負荷は136kΩとなり、Jack 1よりダークで滑らかなサウンドになります。
出力の高いピックアップを使う場合や、少し落ち着いたトーンにしたい場合はJack 2を試せます。
SM57・SM94・Directからキャビネット出力を選択
キャビネットセクションでは、SM57、SM94、Directを選択できます。
- SM57
4.5kHz付近に+3dBのプレゼンスリフトを加え、ギターの存在感を出しやすいサウンド。 - SM94
よりフラットで滑らかなバランスのキャプチャー。 - Direct
内蔵キャビネットシミュレーションをバイパスし、外部IRやスピーカーローダーを使用できます。
内蔵キャビネットは、ヴィンテージJensen P10RをPrincetonスタイルのオープンバックキャビネットに搭載した構成をベースにしています。
Input Calibrationでギターに合わせて入力レベルを調整
Main St 5F1では、入力レベルがアンプの反応に大きく関係します。
そのため、使い始める前にInput Calibrationを行います。
基本的な手順は以下のとおりです。
- Jack 1を選択する。
- Inputを0.0dBにする。
- 普段使う最大程度の強さでコードを弾く。
- オーディオインターフェースがクリッピングしていないことを確認する。
- 画面下部の「in」のピーク値を確認する。
- ピックアップに合わせてInputを調整する。
目安となるピーク値はこちらです。
- Vintage Single-Coil:0.4〜1.0V
- Hot Single-Coil:0.8〜1.8V
- Vintage Humbucker:1.0〜1.8V
- Hot / High-Output Humbucker:2.0〜3.5V
- Active Pickups:1.5〜2.5V
Inputは一般的なGainのように音色を作るためのものではありません。
ギターやオーディオインターフェースから送られてくるレベルを、アンプ回路が想定する入力レベルに合わせるための機能です。
アンプ内部の動きをリアルタイムで確認できる
画面下部には、入力レベルだけでなくアンプ内部の状態も表示されます。
- in[V pk]:アンプへ入るピーク電圧
- out[dBFS]:デジタル出力レベル
- B+[V]:6V6パワー管へ供給される高電圧DC
- [mA]:6V6のプレート電流
- Sample Rate & Latency:サンプルレートと処理遅延
強く弾いたときにB+電圧が下がるなど、物理モデリングされた回路が演奏にどう反応しているのかを視覚的にも確認できます。
1×〜8×のオーバーサンプリングに対応
Main St 5F1は、1×/2×/4×/8×のオーバーサンプリングを搭載しています。
用途に合わせて切り替えられます。
- 1×/2×
リアルタイム録音、ライブ演奏、低レイテンシーでのモニタリング向け。 - 4×/8×
ミックスや最終的なレンダリング/バウンス向け。
高い設定ほどCPU負荷も増えます。
録音中は1×または2×、最終的な書き出しでは4×や8×という使い分けができます。
チューナーも内蔵
Main St 5F1にはチューナーも搭載されています。
- 音名、セント差、周波数を表示
- ±3セント以内でインジケーターがグリーンに変化
- 25Hz〜1400Hzまで検出
- 5弦ベースのLow Bにも対応
- チューニング中はアンプ出力をミュート
- A4を430〜450Hzまで1Hz単位で変更可能
- 標準設定はA4=440Hz
チューナーはプリアンプへ入る前の信号を使用するため、アンプ側の歪みに影響されず音程を検出できます。
Main St 5F1を楽曲制作でどう使う?
Main St 5F1は、細かなパラメーターで音を作り込むよりも、Volumeと演奏ニュアンスを組み合わせて使うアンプシミュレーターです。
クリーンとブレイクアップを弾き方で行き来する
Volumeをクリーンと歪みの境目付近に設定すると、ピッキングによってサウンドを変化させられます。
弱く弾く部分はクリーン寄りに。
アクセントを付けて強く弾けば、歪みやコンプレッションが加わります。
同じアンプ設定のまま、演奏の強弱をギタートラックへ反映させたいときに使える方法です。
Tweedクランチを使ったギタートラックを作る
Volumeを5〜8付近まで上げれば、Tweedらしいクランチ領域を使えます。
ブルース系のクランチや、ヴィンテージ感のあるギターパートを作りたいときに取り入れやすい設定です。
手持ちのIRと組み合わせる
Directを選択すると、内蔵キャビネットをバイパスできます。
Main St 5F1のアンプ回路を使いながら、後段に手持ちのIRローダーやキャビネットシミュレーターを組み合わせることも可能です。
Main St 5F1が向いている人
Main St 5F1は、Tweed系のサウンドと演奏に対するアンプの反応を重視したい人に向いています。
- Tweed系のクリーンやクランチを使いたい
- ピッキングの強弱をサウンドへ反映させたい
- ギター側のVolumeを使って歪みをコントロールしたい
- シンプルなアンプ操作を好む
- 真空管アンプのサグやコンプレッションを生かしたい
- 外部IRと組み合わせたい
- 無料のアンプシミュレーターを探している
Main St 5F1が向いていない可能性がある人
Main St 5F1は、1つのプラグインに多数のアンプやエフェクトを収録したギターワークステーションではありません。
次のような使い方を求める場合は、目的と合わない可能性があります。
- 多数のアンプモデルを切り替えたい
- エフェクトを組み合わせて複雑なギターリグを作りたい
- プリセット中心ですぐに完成したサウンドを呼び出したい
- 最初からステレオ処理されたアンプサウンドを使いたい
機能数よりも、5F1系アンプのシンプルな操作と回路の反応を楽しむタイプです。
Main St 5F1を使う前に知っておきたいこと
アンプ回路はモノラルなので、DAWでは基本的にモノラルのギタートラックへ挿入します。
出力はモノラルとステレオの両方をサポートしています。
そのほか、導入前に確認しておきたいポイントはこちらです。
- ステレオ感が必要な場合は後段のリバーブやモジュレーション、ダブルトラッキングなどを利用する
- ギターやオーディオインターフェースのGain設定を変更した場合はInput Calibrationを再調整する
- 高いオーバーサンプリング設定ほどCPU負荷が増える
- macOSでは初回起動時にGatekeeperの通知が表示される場合がある
Main St 5F1のシステム要件
Windows、macOS、Linuxに対応しています。
- Windows:Windows 10以降/64bit
- macOS:macOS 10.13 High Sierra以降
- Mac:Intel/Apple Siliconネイティブ対応
- Linux:x86_64/glibc 2.35以降
- プラグイン形式:VST3
- macOS:AU対応
- スタンドアロン版:対応
macOSではLogic ProやGarageBandでもAUとして使用できます。
初回起動時にGatekeeperのセキュリティ通知が表示された場合の認証方法は、付属するINSTALL.txtに記載されています。
Main St 5F1まとめ
Main St 5F1は、1956年のTweed 5F1をコンポーネントレベルで物理モデリングした無料アンプシミュレーターです。
ポイントをまとめると、次のようになります。
- 真空管、整流回路、出力トランス、スピーカーまで物理モデリング
- ピッキングの強弱に応じてクリーンからブレイクアップへ変化
- 5Y3GT整流管によるサグを動的に再現
- VolumeひとつでクリーンからTweedクランチ、パワー管サチュレーションまで調整
- Jack 1/Jack 2の入力を選択可能
- SM57/SM94/Directを搭載
- 外部IRとの組み合わせにも対応
- Input Calibrationで使用環境に合わせて入力レベルを調整
- チューナーとオーバーサンプリングを搭載
- Windows/Mac/Linux対応
大量のアンプモデルから音を選ぶのではなく、シンプルな5F1系アンプをピッキングやギター側のVolumeでコントロールしたい人に適したアンプシミュレーターです。
