
リバーブプラグインは数あれど、VerbSixesはちょっと異次元。
計算効率に優れた「Householder行列」を使い、数万種類の反響音を生成するユニークな設計です。
この記事では、VerbSixesの仕組みと特長を、なるべく分かりやすく解説します。
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VerbSixes:Airwindowsが生んだ革新的なリバーブプラグイン

VerbSixesは、Airwindowsが開発した非常にユニークなリバーブ(残響)プラグインです。
単に音を広げるだけでなく、「Householder行列」という数学的手法を使って、膨大な数のエコー(反響)を生成するという、ちょっと変わったアプローチをしています。
この記事では、VerbSixesの仕組みや特長を、以下のように詳しく解説します。
VerbSixesの概要と基本機能
VerbSixesは以下のような特長を持っています:
- Householder行列によるリバーブ処理
通常のリバーブでは「オールパスフィルター」などが使われますが、VerbSixesでは「Householder行列」を採用。
これにより、非常に計算効率のよい方法で、豊かなリバーブを作り出します。 - 6×6の行列構造
名称の通り、「6×6」の行列を使っています。この行列が生成する反響はなんと「46,656通り」以上。
再帰的なリバーブ(リジェネレーション)も加わると、さらに膨大な広がりを持ちます。 - 他の行列構造にも対応
VerbSixesは6×6だけでなく、3×3、4×4、5×5の構造も試せるように設計されています。
開発者Chris氏の他のツール(IntoTheMatrixなど)を使えば、構造の違いを比較しながら活用可能です。
他のリバーブと何が違うのか
他の一般的なリバーブとVerbSixesの違いは、次のような点に集約されます。
- オールパスフィルターなしでも滑らかな音像
フィルターやEQ処理を一切行わずに、反響密度の高いリバーブを生成できます。 - コントロール不要の設計
パラメーターは一切なく、「ひとつの音響空間(RT60)」だけを提供する仕様。
操作はとてもシンプル。 - 膨大なエコー数で自然な残響
下記のように、行列の大きさに応じて生成されるエコーの数が劇的に変化します:- 3×3 → 27通りのエコー
- 4×4 → 256通り
- 5×5 → 3,125通り
- 6×6 → 46,656通り
数学的仕組みをざっくり解説
ちょっとだけ技術的な話もしておきましょう。VerbSixesの根底には、「Householder行列」が使われています。
これは音の信号を行列演算によって別のディレイラインに転送することで、反響の種類を増やす仕組みです。
- 計算の工夫がすごい
掛け算ではなく、「符号反転(-2倍)」「2倍」といった処理で済ませられるため、古い機材でも扱える軽さを実現。
これ、実はかつての名機「Midiverb」も使っていた裏技なんです。 - BitShiftGainの応用
倍数処理は「BitShiftGain」で行い、音質を保ちながら演算コストを最小限に抑える工夫がなされています。
どんなシチュエーションで使えるか?
VerbSixesは以下のような使い方が想定されています。
- リファレンスリバーブとして
さまざまなマトリックス構造を比較したり、リバーブ設計のベースにしたりするための「比較基準」として非常に有用です。 - 奥行きを加えるAuxプラグインとして
完全な「ウェットシグナル(残響だけの音)」で出力されるため、AUXに挿して他の音に空間を加える用途にも最適。 - クリエイティブな実験空間として
他のAirwindowsツールと組み合わせて、自由に空間構造を設計できます。
まとめ:VerbSixesは”音の宇宙空間”を体験できるツール|DTMプラグインセール
VerbSixesは、単なるリバーブプラグインではありません。
非常に緻密な数学的ロジックに基づいて構成され、「音に深みと広がりを与えるための実験室」としても使えるツールです。
- フィルターやEQなしで自然な残響を実現
- 最大46,656通り以上のエコー生成
- パラメーター不要のシンプル設計
- 数学的に無駄のない処理でCPU負荷も軽い
- 比較・実験用途にも適したリファレンス的存在
クリエイティブなリバーブ表現を求めるなら、一度試してみる価値ありです。