
同じ周波数で、あえて「ブースト」と「カット」を同時に行う。
一見すると矛盾したその操作が、低域を太く、しかも引き締める。
The Trickは、カーブではなく回路そのものを動かす発想から生まれた、キャラクター重視のパッシブEQプラグインです。
The Trickとは

The Trickは、クラシックなパッシブ・プログラムEQの回路そのものをモデリングしたEQプラグインです。
一般的なEQのように「カーブを再現する」のではなく、実際のアナログ回路構造をサンプル単位で動かします。
BoostとCutを同時に行う。
しかも、あえて同じ周波数で。
この一見矛盾した動作こそが、The Trickの名前の由来です。
最大の特徴:Boost & Cutを同時に行う回路設計
The Trickの低域セクションは、以下の構成です。
- LF Boost
- LF Atten(Attenuation)
- 共有の周波数セレクター(20 / 30 / 60 / 100 Hz)
BoostとAttenは同じ周波数を選択します。
しかし、内部では独立したLCネットワークとして動作します。
その結果どうなるか。
- まず低域が共振的に持ち上がる
- そのすぐ上が軽く削られる
つまり、
「太くなるのに、もたつかない」
という独特のカーブが自然に生まれます。
これはソフト的な裏技ではありません。
ハードウェアと同じ理由で起きる現象です。
高域セクション:Air Without Sizzle
高域には2つの独立ネットワークがあります。
HF Boost
- 7段階の周波数選択(3 / 4 / 5 / 8 / 10 / 12 / 16 kHz)
- Bandwidth(Q)調整可能
- 共振型RLCピーク
例えば、
- 10 kHzをブーストすると存在感が出る
- 8〜10 kHzで空気感を足せる
- 3〜5 kHzでボーカルの前出しが可能
HF Atten
- 5 / 10 / 20 kHzの3ポジション
- 独立したハイシェルフ・カット
おすすめの使い方は、
- 10 kHzをBoost
- 20 kHzをAtten
こうすることで、存在感は増すのに、耳障りなシズル感を抑えられます。
いわゆる「Air without sizzle」です。
EQをオフにしても残るキャラクター
The Trickは、EQをすべてゼロにしても完全なバイパスにはなりません。
信号は常に以下を通過します。
- チューブ・メイクアップステージ
- トランスフォーマーのボイシング
その結果、
- 偶数次倍音の付加
- 低域のわずかな温かみ
が加わります。
いわば「電源を入れているだけで鳴りが変わる」タイプの設計です。
モデリング方式:Wave Digital Filter
The Trickは、Wave Digital Filter(WDF)ツリーとして回路を実装しています。
- 抵抗
- コンデンサ
- インダクタ
- 周波数セレクタースイッチ
これらをサンプル単位で動作させます。
重要なポイントは、
- パッシブ回路部分は線形
- そのためエイリアシングが発生しない
オーバーサンプリングが必要なのはチューブステージのみです。
品質モード(Quality)
チューブステージ専用のオーバーサンプリング設定です。
- Eco(1x)
- Normal(2x)
- HQ(4x)
- Ultra(8x)
用途の目安は以下のとおりです。
- トラッキング時はEco
- 通常作業はNormal
- 最終書き出しはUltra
典型的な使いどころ
推奨チェーン例です。
1. バスやマスターで
source → comp / de-ess → The Trick → limiter
ダイナミクス処理の後、ピークキャッチ前に置く。
素材全体のトーンを整える用途です。
2. マスタリング的な流れ
source → The Trick → opto/VCA leveler → limiter
ハードウェアの典型的な接続方法。
レベル変化を後段で吸収します。
3. 名前の由来ムーブ
source → The Trick(60 HzでBoost & Atten両方上げる)→ saturator
- Outputを−6 dBから開始
- LF BoostとLF Attenを0.3から上げていく
- 0.3〜0.7付近でピーク→ディップが決まる
低域が締まりながら前に出ます。
どんなEQではないのか
The Trickは、サージカル用途には向きません。
- LFは4ポジション
- HF Boostは7ポジション
狭帯域で特定の共振をピンポイントで削る設計ではありません。
用途はあくまで、
- トーンシェイピング
- ハーモニックな色付け
- 音楽的な持ち上げ
音を整えるより、音を育てるタイプのEQです。
システム要件
- Windows 10+ 64bit / Linux 64bit
- 44.1 kHz 〜 192 kHz対応
- 64bit x86 CPU
- Ecoモードではレイテンシーゼロ
- メール認証方式
- iLok不要
まとめ:MousePlugins「The Trick」同じ周波数であえて“ブーストとカット”を同時に行う!回路そのものを再現したパッシブEQ|DTMプラグインセール
The Trickは、カーブではなく回路を動かすEQです。
同じ周波数でBoostとCutを同時に行う。
その結果、低域が太く、しかし整理される。
高域は空気感を足しながら耳障りさを抑えられる。
さらに、チューブとトランスの色が常に乗る。
細かく削るEQではありません。
音楽的に押し出すためのEQです。
「整える」より「キャラクターを足す」。
そういう発想で使うと、このプラグインの本質がよく見えてきます。
