
「PurestSaturation」は、Airwindowsが手がけた“あえて数学的に間違った”サチュレーションプラグイン。
柔らかく音楽的な歪みを生む、他にはない独創的な設計が魅力です。
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PurestSaturation:”究極に純粋な”ソフトクリップ

音楽制作やミキシングにおいて「サチュレーション」は欠かせない要素です。
特にアナログの温かみをプラグインで再現したい方にとって、その質感や挙動はとても重要。
今回紹介する「PurestSaturation」は、AirwindowsのChris氏による実験的かつ独創的なサチュレーション・プラグイン。
その設計は他のどのプラグインとも異なり、「数学的に間違っている」アプローチをあえて用いることで、独特の響きと柔らかさを実現しています。
PurestSaturationの特徴と設計思想
- ソフトクリップの新解釈
- 通常、サチュレーションでは正確な
sin()(サイン関数)に近い曲線を使い、滑らかにクリップさせます。 - PurestSaturationでは、あえてこの数学的な精度を崩し、「間違った」サイン関数の近似式(タイラー展開)を使っています。
- 通常、サチュレーションでは正確な
- “TapeHack”の進化形
- 過去に公開されたTapeHackは、レトロ感のある柔らかいサチュレーションを狙ったものでした。
- PurestSaturationはさらに奇抜な方法で、よりダイナミックで個性的な音を狙っています。
- BitShiftGainの応用
- Airwindowsの「BitShiftGain」は、浮動小数点数の”mantissa(仮数部)”を変えずに音量調整ができる「完璧にロスレスなゲインコントロール」を実現しています。
- PurestSaturationでは、このBitShiftGainの考え方を5段階にわたりサチュレーションアルゴリズムに組み込み、”mantissaを変えない”という哲学を拡張しています。
- 分母の設計がユニーク
- 通常のサイン関数展開では、分母に「階乗(1, 6, 120, 5040…)」などを使いますが、PurestSaturationではあえて
-18dB, -42dB, -72dBなど、特定のデシベル量に対応する値で調整。 - これにより、mantissaをできるだけ再量子化させず、理論上「ロスレス」に近づけています(ただし、実際は意図的に”不正確”な処理)。
- 通常のサイン関数展開では、分母に「階乗(1, 6, 120, 5040…)」などを使いますが、PurestSaturationではあえて
PurestSaturationの音の特徴
- 通常のソフトクリップとは一味違う
- sin関数に似せたが「正確ではない」ため、結果的に個性的な歪み方になります。
- 柔らかく、ダイナミックで、音楽的な表現力に優れたクリッピング効果が得られます。
- 具体的な使用感
- ボーカルなどのミックスでは「きれいさを保ちながら厚みを足す」ことができると報告されています。
- サブベースのような低域では、強さと存在感がしっかり感じられるという感想も。
- 「壊れた数学」による芸術的処理
- Chris氏自身も「このような、mantissaの無再量子化を意識したsin関数近似は聴いたことがない」と述べています。
- 純粋な音響処理の実験としても非常に興味深いアプローチです。
PurestSaturationがおすすめな人
- 実験的なサチュレーションを探している方
- 透明感がありながらも温かみを加えたい方
- 自分のミックスに“独自性”を持たせたい方に特におすすめです。
プラグイン形式
- CLAP / AU / VST3 / LV2形式で利用可能。
- Mac(Intel/M1)、Windows、Linuxなど各プラットフォーム向けにビルドされたバージョンが提供されています。
まとめ:PurestSaturationは「間違った数学」が生み出す音の美学|DTMプラグインセール
PurestSaturationは、数学的な正確さよりも「音の響き」に重きを置いたサチュレーションプラグインです。
- 「完璧でない」計算をあえて使うことで、豊かで音楽的なクリッピングを実現
- 浮動小数点のmantissaに注目した独自のロジックで、ロスレスなような歪みを実現
- 通常のサチュレーションでは得られない、ユニークなキャラクターと柔らかさを持つ
- 多様なフォーマットに対応し、ほとんどのDAWで利用可能
自分のミックスに「一味違う」質感を加えたいとき、PurestSaturationは非常に頼りになる選択肢です。
