
IM_DISPERSERは、音の位相と時間構造に深く踏み込む、少しクセのあるオーディオプラグインです。
一般的なエフェクトとは違い、音そのものを派手に変えるのではなく、音が届く順番や重なり方を操作します。
ドラムやベースに「まとまり」や「粘り」を加えたい人にとって、試す価値のある存在です。
IM_DISPERSERとは何か

IM_DISPERSERは、オープンソースで開発されているディスパーサー系のオーディオプラグインです。
音の位相や到達時間を細かくコントロールし、ドラムやシンセサウンドに独特の粘りやパンチを与えることを目的としています。
高性能を支えるRust製DSPコア
IM_DISPERSERのDSPコアは、Rust言語で書かれています。
開発者はIAMMRGODIEで、高性能オーディオライブラリ「i_am_dsp」をベースに構築されています。
Rustはメモリ管理が非常に厳密な言語です。
そのため、高負荷時でも安定した処理を行える一方で、ビルド時に独特な「チープ音」が出ることがあると、作者自身が冗談交じりに触れています。
性能面の特徴は以下の通りです。
- 高負荷な処理にも耐える設計
- リアルタイム処理を前提としたDSP構成
- SIMD最適化による効率的な演算
最大200段のオールパスフィルターを使用
IM_DISPERSERの核となる仕組みが、オールパスフィルターのスタッキングです。
最大で200段ものバイカッド・オールパスフィルターを直列に使用しています。
オールパスフィルターは、音量や周波数特性を変えずに位相だけを操作するフィルターです。
これを大量に重ねることで、いわゆる「Disperserサウンド」を作り出しています。
リニアフェーズでのディスパージョン制御
IM_DISPERSERでは、カットオフ周波数と帯域幅を動的に調整できます。
これにより、特定の周波数付近での遅延時間の差を精密にコントロール可能です。
この仕組みによって、以下のような効果が得られます。
- ドラムに独特のパンチ感を与える
- シンセサウンドにまとわりつくような粘りを追加
- 音が前に出てくるような感覚を演出
グループディレイによる時間軸の再構築
IM_DISPERSERは、基本的にはフィルターです。
ただし、グループディレイの原理を使い、音の時間軸を再配置します。
周波数ごとの到達時間をずらすことで、散らばっていた成分をトランジェントに集中させます。
結果として、以下のような印象を生み出します。
- 音が一体化したように感じられる
- 弾力のあるバウンシーな質感
- 強くまとまったアタック感
トランジェントシェイピングへの応用
位相を精密にシフトすることで、低域が高域よりもわずかに遅れて到達するよう調整できます。
この微妙なズレが、ミックス上で大きな効果を発揮します。
具体的には、
- キックの低音が極端に安定して聴こえる
- ベースにステッカーのような弾力感が出る
- ローミッドが前に張り付くような感触になる
といった変化を得られます。
金属的なテクスチャについて
IM_DISPERSERを強くかけると、金属的な質感が現れることがあります。
これはディスパージョン処理特有の副作用とも言えます。
意図的に使えば、
- 実験的なサウンドデザイン
- インダストリアル寄りの質感作り
- 個性的なアタック表現
にも応用できます。
UIと動作上の注意点
UIはかなり凝った作りになっています。
その反面、UIを常に開いたままにすると動作が重くなる場合があると作者は述べています。
実際の使用時は、
- パラメータ調整後はUIを閉じる
- 高負荷なプロジェクトでは特に注意する
といった運用が無難です。
完全なオープンソースプロジェクト
IM_DISPERSERは完全なオープンソースプラグインです。
GitHub上でソースコードが公開されています。
ライセンス条件を守る必要はありますが、
- ソースコードの閲覧
- 改変
- 再配布
が可能です。
開発の仕組みを学びたい人にとっても、非常に興味深いプロジェクトと言えます。
まとめ:SOUT AUDIO「IM_DISPERSER」音を潰さず存在感を足すという選択肢!音の到達順を調整してパンチとまとまりを両立させるプラグイン|DTMプラグインセール
IM_DISPERSERは、ディスパージョン処理とグループディレイを使い、音の時間軸を積極的に作り替えるプラグインです。
一見すると分かりにくい処理ですが、使いどころがハマると、ミックス全体の質感を大きく変えてくれます。
- 位相だけを操作するオールパスフィルターを大量に重ねた構造
- 周波数ごとの到達時間を調整し、トランジェントを強調できる
- キックやベースに粘りや一体感を与えやすい
- 強くかけると金属的で実験的な質感も作れる
- オープンソースで中身を確認・改変できる
扱いやすい万能エフェクトではありませんが、音作りに新しい刺激が欲しい人には、非常に面白い選択肢です。
いつものミックスに違和感を足したいとき、IM_DISPERSERは意外な答えをくれるかもしれません。
