
Airwindowsの「Donut」は、エンベロープでフィルターを動かすという発想から生まれた実験的なプラグインです。
音量ではなく“音色”を揺らす設計が特徴で、ヒップホップ的なうねりや再構築的なベース処理まで狙えます。
シンプルなUIの裏に、かなり奥行きのあるサウンドメイクが隠れています。
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Donut:Dillaへのオマージュから生まれた、エンベロープ×フィルター・プラグイン

Donutは、Airwindowsが公開したフィルター系プラグインです。
コンセプトはシンプルですが、サウンドはとても奥深い。
ひとことで言えば、
「コンプレッサーの動きでローパスフィルターを揺らす」プラグインです。
ただし、単なるフィルターではありません。
作者Chrisが、故J Dillaのサウンドスピリットに着想を得て制作した、実験的かつ音楽的なツールです。
基本構造
- ベースはコンプレッサー的なエンベロープ処理
- ただし音量を変化させるのではない
- ローパスフィルターをモジュレートする
- フィルターには「ステートバリアブルフィルター(SVF)」を採用
つまり、
音の強弱 → エンベロープが反応 → フィルターが動く
という仕組みです。
これによって、うねるような質感や、グルーヴィーな動きを作れます。
コンプレッサー部分の特徴
Donutに搭載されているエンベロープは、Bezierフィルター方式のコンプレッサー構造をベースにしています。
この方式のポイントは次の通りです。
- アタック時の不自然なアーティファクトが出にくい
- 滑らかに反応する
- 音の質感を壊しにくい
調整できるパラメータ
- Attack(アタック)
- ほぼBeziCompと同様の挙動
- Release(リリース)
- かなり遅くまで設定可能
- ゆっくり揺らす効果も作れる
レゾナンスを上げると、ほぼ単音が揺れているような状態まで確認できます。
「どんな動きをしているのか」を視覚的ではなく、音で確かめられる設計です。
フィルター構造について
Donutのフィルターは、一般的なローパスとは少し違います。
採用しているのはステートバリアブルフィルター(SVF)
- オートメーション耐性が高い
- バイカッドよりも滑らかに動く
- 音色的な個性を持たせやすい
このフィルターは、後に「Dattorro」という名前で単体プラグインとしても公開予定とのことです。
教科書に掲載された有名なSVFコードをベースに、デバッグと改良が加えられています。
Donutでは、その実験的バージョンを使用しています。
操作できるパラメータ
UIはとてもシンプルです。
主なコントロール
- Filter Cutoff
- Resonance
- Cutoff Modulation(エンベロープによる変化量)
- Resonance Modulation(エンベロープによる変化量)
特徴的なのは、中央がゼロ位置になっていることです。
つまり、
- エンベロープで加算することもできる
- 逆に減算することもできる
レゾナンスも同様です。
この「足す/引く」の発想が、音作りの幅を広げます。
Dilla的な使い方はできるのか
作者は明言しています。
これは「Dillaボタン」ではない、と。
特定の機材やエフェクトを完全再現するクローンではありません。
あくまで“スピリット”を取り入れた設計です。
とはいえ、次のような使い方が可能です。
たとえば
- トラックを分割して一部だけ強くかける
- フィルターを低域寄りに設定
- レゾナンスを適度に上げる
- 強めのモジュレーションをかける
これによって、独特の揺らぎや再合成的なベース感を作れます。
作者自身、DillaがMoogに通して処理していたのではないか、と推測しています。
Donutは、そのような低域リシンセ的な質感も狙えます。
サウンドのキャラクター
このフィルターは、極端に急峻なタイプではありません。
その代わり、
- 音色を保ちながら形を変える
- トーンを活かしつつ揺らす
- アナログ的な質感を感じさせる
という方向性です。
強くかければ個性的。
軽くかければニュアンス付けにも使えます。
設定のコツ
設定のコツは、以下の通りです。
揺れを大きくしたい場合
- アタックを遅め
- リリースを速め
- モジュレーション量を上げる
かなり“うねる”挙動になります。
ベースを再構築したい場合
- カットオフを低く
- レゾナンスを適度に上げる
- 入力レベルを調整
太さを保ちながら動きのある低域が作れます。
実験的に使うなら
- トラックの一部だけに挿す
- パラレル処理にする
- ドラムループに強くかける
予測不能なニュアンスが生まれます。
対応フォーマット
Donutは単体版のほか、Consolidatedプロジェクトにも収録されています。
主な対応形式
- AU
- VST2
- VST3(Consolidated)
- CLAP
- LV2
- Linux版あり
- VCV Rack向けビルドあり
MITライセンスのオープンソースです。
ソースコードも公開されています。
まとめ:Airwindows「Donut」音量ではなく“音色”を揺らす。エンベロープ駆動フィルター|DTMプラグインセール
Donutは、
- エンベロープフォロワー
- Bezier系コンプレッサー構造
- ステートバリアブルフィルター
- 加算/減算型モジュレーション
これらを組み合わせた、実験的フィルタープラグインです。
特定のサウンドをワンボタンで再現するタイプではありません。
その代わり、触るほどに発見があります。
「決められた使い方」よりも、「遊びながら見つける音」が似合うツール。
90年代ヒップホップの空気感を感じたい人にも、
フィルターで新しい揺らぎを作りたい人にもおすすめできます。
音を削るだけではない。
音を“揺らす”という発想。
Donutは、そんな体験をくれるプラグインです。
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